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【介護リーダーの統率力】カリスマ不要・仕組みでチームを動かす

現場実践

自分にはカリスマ性がない、リーダー気質ではない。だから自分は介護リーダーに向いていないと感じている方は多いのではないでしょうか?

実は、カリスマ性がなくても、チームを同じ方向に動かす力はつくれます。

なぜなら、その力はカリスマという資質ではなく、自分の考えを言語化し、仲間を増やし、仕組みに落とし込んでいく一連の手順によってつくれるからです。

私は介護業界10年以上、複数の施設でリーダーを経験してきました。社会人4年目でリーダーに就任しましたが、部下は歳上ばかりで誰も話を聞いてくれない状況からのスタートでした。そこから試行錯誤を重ね、「この施設最悪」とスタッフが嘆いていた施設を、350施設中アンケート改善率3位まで引き上げることができました。その経験をもとに、カリスマ性に頼らない統率力のつくり方を解説します。

この記事では、カリスマ不要で統率力をつくる6ステップ、介護現場特有の難しさ、そして実践前に知っておくべき落とし穴について解説します。

この記事を読むと、やりたい介護をもとにチーム全体を巻き込んでいく具体的な手順がわかります。

結論、統率力はカリスマでつくるものではなく、仕組みでつくるものです。

統率力はカリスマだけではない

「リーダーには統率力が必要だ」と言われると、つい「人を惹きつける才能」や「カリスマ性」を思い浮かべてしまいます。
もちろん、カリスマ性があるに越したことはありません。カリスマ性でチームを動かせるリーダーも確かにいます。

ただ、カリスマ性がなくても統率力はつくれます。

私が現場で感じてきたのは、リーダーシップとはチームを引っ張るカリスマ性だけではなく、自分の介護観を言葉にして、チームに働きかけ続ける行動でもあるということです。
私自身、部下は歳上ばかりで、スキルも経験も相手のほうが上という状況でリーダーになりました。人を惹きつけるタイプでもありません。

それでも、自分の介護観を言葉にし、伝える場を仕組み化することで、チームを一つの方向に動かすことができました。

統率力のひとつの形として、「介護観をつくり、伝え続ける仕組みをつくれるかどうか」という視点を持ってもらえればと思います。

統率力をつくる6ステップ

統率力は性格でつくるものではありません。以下の手順を踏むことで、チームを同じ方向に動かす力をつくることができます。

① やりたい介護を言語化する

まず最初にやるべきことは、自分がどんな介護をやりたいか、どんな介護はやりたくないかを言語化することです。ここが軸になります。

軸があることで、考えが合うスタッフが仲間になり、合わないスタッフは離れていきます。
逆に軸がなければ、部下はついてきません。部下は日々のリーダーの言動から、その考え(介護観)を感じ取り、自分の考えと合うかどうかを判断しています。

私の場合、やりたい介護は「個浴で入浴する」「椅子に座って食事をする」などあたり前の生活を守ることでした。

あたり前の生活を守るとは、すこし具体的に説明すると、本来は個浴に入れるADLの利用者を、スタッフの都合で機械浴にしてしまうことをやめようという考えです。
すべての利用者に個浴や椅子での食事を当てはめるという意味ではないです。両下肢麻痺など、個浴が難しい方には機械浴が必要です。

やりたくない介護は、こうしたスタッフ主体で効率だけを優先するケアです。トイレで排泄できる方がベッド上でおむつ交換をさせられているような状況も同じです。これらを、私はやりたくないと決めました。

② つくりたい施設像を考える

やりたい介護が決まったら、それを実現するためにどんな施設にしたいかを考えます。ここでのポイントは、施設長の意向を最初から優先するのではなく、自分の軸からスタートすることです。

私の場合、「個浴で入浴する」「椅子に座って食事をする」という軸から、「介護現場をふつうの生活に近づける施設」という理念が見えてきました。これが、自分が実現したい施設像になります。

③ 会社の方向性と一致確認する

軸と施設像が決まったら、会社や施設長が目指す方向性と一致しているかを確認します。

一致していれば、そのまま進めます。
一致していない場合は、無理にその場で介護観を変えようとせず、転職や異動を検討することをおすすめします。
介護観が合わない環境で働き続けることは、自分にとっても会社にとっても辛いものです。施設やチームを変えようと努力するより、自分の介護観が浸透する環境に移る方が、結果的に早く統率力を発揮できます。

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④ 介護観を5つの場で伝える

方向性が一致したら、次は軸を現場に浸透させていきます。使う場は5つです。

現場(フロア)

最もリアルに介護観が現れる場です。
利用者対応に違和感を覚えた瞬間こそ、理念を伝えるチャンスです。

申し送り

単なる情報伝達で終わらせず、理念や方針を現場に送る機会として活用します。

会議

全体会議・リーダー会議・チーム会議それぞれで、方針や考え方を共有します。

面談

1対1で思いや考えを伝え合う場です。年2回を目安に、双方向で介護観を共有します。

研修

知識を得るだけで終わらせず、実践し、振り返り、定着させるところまで繋げます。

5つの場で繰り返し伝えることで、軸が少しずつ現場に浸透していきます。

⑤ 介護観の合う人が仲間になる

軸を伝え続けると、考えに共感してくれる人が自然と現れます。この人たちを仲間にしていきます。

全員に共感してもらう必要はありません。
2:6:2の法則があります。
スタッフの上位2割は最初から考えが合い、下位2割は最後まで合わないものです。重要なのは、中位6割の存在です。最初は特に強い考えを持たず働いている層ですが、ここに仲間を通じてアプローチすることで、チーム全体を巻き込んでいくことができます。

⑥ 仲間と介護観を定着させる

最後のステップが、④でやってきた「5つの場での伝え方」を、一人ではなく仲間と一緒に行うことです。

リーダー一人が伝え続けるのではなく、仲間も同じ介護観を現場・申し送り・会議・面談・研修の5つの場で伝えます。リーダーがいない日も、仲間が同じ言葉で伝えてくれることで、介護観が施設全体に根付いていきます。

一人の声では届かなかった中位6割も、複数の仲間から同じ言葉で伝えられることで、「これは施設の方針だ」という実感に変わっていきます。

ここまでくると、リーダー一人の力でチームを動かしているのではなく、仕組みと仲間がチームを動かしている状態になります。これが、カリスマに頼らない統率力のひとつの形です。

介護現場の統率が難しい理由

ここまでの6ステップは、他の業界ならもっと簡単に進むかもしれません。
介護現場には、統率を難しくする3つの構造的な事情があるからです。
先に知っておくことで、6ステップがなぜこの順番で必要なのかが見えてきます。

① 専門職同士の優先順位が違う

介護職、看護職、リハビリ職が同じ利用者を見ていても、それぞれ優先したいことが違います。
看護職は感染リスクや安全管理を重視し、介護職は本人の希望や生活の質を重視する、といったズレが起きやすい現場です。
軸(①②)を言語化していても、こうした立場の違いそのものはなくなりません。
ただ、自分の軸が明確であれば、議論が割れたときに「自分はこの考えで判断する」という基準を持って話し合いに参加できます。
軸がなければ、その場の空気や相手の立場に流されてしまいます。

② シフトで持っている情報が違う

シフトが分かれている以上、早番しか知らない出来事、夜勤しか気づいていない変化が必ず生まれます。一度集まって伝えたつもりでも、その場にいなかった人には何も伝わっていません。
これが、④で「5つの場」を使い分ける理由です。一度の会議で終わらせず、申し送りや面談など複数のルートで繰り返し伝える必要があるのです。

③ 判断のものさしが世代で違う

経験の長いスタッフは「今までこうしてきたから」という経験則で判断し、新人は「教わったルールに沿って」判断します。同じ出来事を見ても、判断の基準が違うため、リーダーの言葉だけでは全員に同じように届きません。
これが、⑤⑥で「仲間を増やし、ルール化する」ことが重要になる理由です。
リーダー一人の言葉ではなく、複数人が共有するルールにすることで、世代を超えて伝わる基準ができます。

リーダーが知っておくべきこと

6ステップを実践していく中で、もう一つ気をつけたいことがあります。
それが「現場第一主義」の罠です。

現場に入り込み、自ら手を動かすことは、利用者に寄り添う上でとても大切です。
①②で決めた軸も、現場に立つからこそ気づける違和感から生まれます。スタッフからの信頼も得やすくなります。

ただし、現場業務に集中しすぎると、④⑤⑥にあてる時間がなくなります。
介護観を伝える場をつくる、仲間と一緒に介護観を定着させる、こうした動きは現場の手を止めて頭を使う時間が必要です。
現場に入り込みすぎているリーダーほど、「伝える時間がない」「仲間を増やす余裕がない」という状態に陥りがちです。

さらに、リーダーが常に現場で細かく指示を出していると、スタッフは「自分で考えるより、リーダーの指示を待つ」姿勢になりやすく、自主性が育たなくなります。これでは⑤で仲間が増えにくくなります。

現場で手を動かす時間と、①〜⑥を進める時間。両方を意識して時間を配分することが、統率力を育てる土台になります。

統率力導入の注意点

メリット

  • カリスマ性や経験年数に関係なく、誰でも実践できる
  • 仲間が増えるにつれて、自分一人で動かさなくても施設が回るようになる
  • 自分の介護観が施設のルールになることで、自分が休んでも現場の質が保たれる
  • 介護観が合うスタッフが残りやすくなり、チームが安定する

デメリット

  • ①の言語化に時間がかかる。やりたい介護が言葉にならないうちは次に進めない
  • ③で会社・施設長と方向性が合わない場合、転職・異動という大きな決断が必要になる
  • ⑤の仲間ができるまでに時間がかかる。早くても数ヶ月、長ければ1年以上かかることもある
  • お局から反感を買うことがある

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注意点

介護観を伝えることに集中するあまり、合わないスタッフを排除しようとするリーダーがいます。
ただ、下位2割は最後まで合わない可能性があります。その人たちを変えようとするより、中位6割にエネルギーを使う方が、チーム全体への影響は大きくなります。

まとめ:統率力は仕組みでつくる

統率力はカリスマ性や生まれ持った資質ではありません。

やりたい介護を言語化し、施設像に落とし込み、会社の方向性と一致確認をする。
その上で5つの場で介護観を伝え続け、仲間を増やし、介護観を定着させていく。
この6つの手順を踏むことで、カリスマ性に頼らずチームを同じ方向に動かす土台をつくることができます。

大切なのは全員を動かそうとしないことです。
上位2割の仲間をつくり、中位6割に届けることを意識するだけで、チームは自然と変わっていきます。

まずは①から始めてください。
「自分がやりたい介護」と「やりたくない介護」を紙に書き出すだけで構いません。それが統率力をつくる最初の一歩になります。

統率力のある介護リーダーになりたい方は、介護リーダーがやりたい介護を実現するロードマップも
あわせてご覧ください。より詳しい実践方法を解説しています▼

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