介護業界では、若くして介護リーダーになるケースが多々あります。
結果として、歳上の部下ができます。経験や知識が不足しているため、指示されることもあります。
「介護リーダーとして指導・指摘をしないといけないが、うまくできない。」
「言われたことしかできていない。」
なんてことに悩んでいませんか?
この問題、ルールを作ることで“指導の悩み”はほぼ解決できます。
ルールがない職場では、指摘はすべて「あなたの意見」になります。
だからこそ、「また何か言ってる」「別に従う必要ないでしょ」と軽く扱われてしまいます。
ですが、ルールがあれば違います。
指摘は、あなたの意見ではなく、施設の決まりになります。
その結果、歳上のスタッフに対しても、感情に左右されず冷静に指導できるようになります。
介護施設のみならず、世の中ルールによって成り立っています。
たとえば、信号が赤になれば止まります。無視をすれば、処罰を受けます。
介護施設でも同じです。決まったルールを守れない場合、指摘を受けたり場合によっては就業規則によって処分が決まります。
わたしは、介護リーダーに昇格した際、社員12名中10名は歳上で誰もリーダーとし見てくれませんでした。
提案など何も聞いてくれません。
「だれがお前の言う事を聞くか!」という言わんばかりの言動をされてしまいました。
そこでわたしが行ったことは、自分のやりたい介護・やりたくない介護をスタッフ全員に伝え、共感するスタッフを仲間にし、理想の施設を実現するために必要なルールを一緒に作っていきました。
冒頭で、施設のルールを作れば歳上のスタッフにも指導・指摘ができると書きました。これは事実ですが、実際にはそのためにいくつかのステップを踏む必要があります。
この記事では、ルールを作り定着するまでの流れを具体的に説明します。
最後まで読んでいただけると、歳上の部下に対して臆することなく指摘できるようになります。また、その先で自分がやりたい介護の実現に近づけます。
ルールがあれば、歳上の部下にも指導できる
本記事でいう「ルール」とは、
現場での行動や判断を“誰がやっても同じになる状態”にするための基準のことです。
たとえば、以下のような内容です。
- オムツ交換の手順(当て方・交換のタイミング)
- 食事介助の姿勢やスピード
- 服薬確認の方法(ダブルチェックのやり方)
- 記録の書き方・記入タイミング
- 事故発生時の報告手順
これらを「人によって違う」状態ではなく、
「このやり方で統一する」と決めている状態がルールです。
マニュアルや手順書もルールの一部ですが、それだけでは不十分です。
重要なのは、
全員が同じ基準で判断し、同じ行動が取れること。
ルールが整うことで、現場は
「誰が言うか」ではなく「何が正しいか」で動く状態に変わります。
なぜ現場は回らない?ルールがない職場で起きている本当の問題
介護現場でこんな経験はありませんか?
- 人によってやり方が違う
- 指導しても「前は違った」と言われる
- 注意すると人間関係が悪くなる
- 新人が混乱して育たない
これらの問題、実はすべて同じ原因です。
ルールがない(または曖昧)であること。
ルールがない現場では、すべての判断が「個人任せ」になります。
その結果、何が起きるかというと、
- ベテランは自分のやり方を貫く
- 新人は誰を信じればいいかわからない
- リーダーの指示も“意見のひとつ”として扱われる
つまり、
「正しさ」が人によってバラバラになる状態です。
この状態でどれだけ正しいことを言っても、現場は変わりません。
なぜなら、相手からするとそれは「あなたの考え」だからです。
たとえば、
「そのやり方は危ないからやめてください」
と伝えても、
「私は今までこれでやってきた」「前の職場では問題なかった」
と返されてしまえば、それ以上強く言えなくなります。
ここで多くのリーダーが、
「伝え方が悪いのでは?」「自分の経験不足では?」
と悩みますが、原因はそこではありません。
本当の問題は、
「判断基準が統一されていないこと」です。
ルールを作り、現場に定着させるための前提条件
「ルールを作れば現場は変わります」
ただし、作るだけでうまくいくほど簡単ではありません。
現場に定着させるためには、いくつか押さえておくべき前提があります。
前提①:ルールは“利用者のため”に作る
ルール作りで最も重要なのは、
「誰のためのルールか」を明確にすることです。
本記事では一貫して、
利用者にとって最善かどうかを判断基準としています。
・スタッフの負担軽減だけを目的にしない
・効率だけで決めない
・「楽だから」ではなく「適切だから」で判断する
この軸がブレると、ルールは現場に受け入れられません。
前提②:全員を納得させることはできない
ルールを作ると、
・反発する人
・やらない理由を並べる人
・今までのやり方にこだわる人
は必ず出てきます。
これは避けられません。
そのため、
「全員に理解してもらう」ではなく「組織として統一する」ことを目的にする必要があります。
最初から100%の合意を目指すと、何も決まりません。
前提③:リーダー1人では定着しない
ルールは作るだけでは意味がありません。
現場で守られて初めて価値があります。
そのためには、
同じ考えを持つ仲間の存在が必須です。
・指摘や声かけを分担できる
・ブレない判断ができる
・現場への浸透スピードが上がる
1人で抱え込むと、途中で必ず疲弊します。
前提④:すぐに結果は出ない
ルールを導入しても、
・最初は守られない
・忘れられる
・ミスが増えたように感じる
といった時期があります。
ですがこれは、
現場が変わる過程で必ず通る段階です。
ここでやめてしまうと、何も変わりません。
前提⑤:完璧なルールは存在しない
最初から完璧なルールを作ることは不可能です。
実際に運用してみると、
・現場に合わない
・手順が多すぎる
・逆に曖昧すぎる
といった問題が必ず出てきます。
そのため、
「作って終わり」ではなく「改善し続ける前提」で考えることが重要です。
ルールを作り、現場に定着させる5つのステップ
STEP1 軸を決める

ルール作りの土台となる判断基準(軸)を最初に決めることで、スタッフの意見に左右されずに一貫した判断ができます。
ルールを作るとき大切なことは軸(判断基準)を決めることです。
「誰のためにルールを作るのか」
わたしは、利用者のためのルールを作ることを軸にしていました。
「このルールがうまくいった時、利用者に還元されるのか?」いつも自問自答しています。
なぜ軸が必要なのか?
事例をもとに説明します。
わたしの勤めていた施設での出来事です。
スタッフより「夕食の提供時間を19時までにしたい」と声が上がりました。理由は夜勤者の負荷を減らすためです。
食事提供時間は18時から20時までで利用者はいつ食事をしても良い。というルールでした。20時以降も召し上がっている利用者がいます。その方の食器を夜勤スタッフが手洗いする必要があるので手間が増えるという話でした。※20時前であれば厨房スタッフが行うことになっています。
わたしはその提案に「NO」と言いました。なぜなら利用者にとってマイナスになると考えたからです。生活リズムを大切にし遅めに夕食をとる方がいるのを知っていたからです。
ただこれだと、夜勤者の問題は解決しません。結果、20時以降の食器は手つかずで置いておき朝厨房スタッフが片付けてくれることになりました。利用者にとってマイナスになることなく夜勤者の負担も軽減することができました。もちろん厨房スタッフとも話し合って決めたことなので納得した形で受け入れてもらっています。
ここで、軸がなければ、スタッフの意見をそのままのみ「たしかにな。夜勤は忙しいから負荷を減らすために提供時間を変更するか。」と結論付けていたでしょう。
STEP2 仲間を作る

ルールを現場に定着させるには、仲間と協力することが不可欠です。
ルールを作るためには「仲間」が必要です。
一人でもルールを作ることはできます。ただ、施設で定着させなければ意味がありません。定着させるには指摘や指導をしないといけません。一人では時間と労力がとてもかかります。仲間がいれば、倍以上の時間短縮と半分の労力で済みます。ただ、仲間作りは時間がかかります。自分自身の目で「本当の仲間か」を判断する必要があるためです。
わたしが仲間と思っている人は利用者を主語で考えられるスタッフです。
では、仲間かどうかどうやって確認していったのか?
結論、たくさん会話をしました!!
具体的に5つの場を活用しました。
1.現場(フロア)
2.申し送り
3.会議(ミーティング)
4.面談
5.研修
具体的な取り組み方法はこちらの記事を参照ください▼
【介護リーダー必見】リーダー職へのロードマップ|役割と成長のステップ
STEP3 ルールを導入する

作ったルールを全員に周知し、問題・原因・対策の順で説明することで、理解と納得を得やすくなります。
ルールの原案を仲間と一緒に作ります。
ルールを作り終えると、まず周知・初回説明が必要になります。
「こんなルールが始まりますよ〜」ってやつです。
周知・初回説明をどのように行うのかはその施設によって変わってきます。
わたしの場合は、全体会議にて全スタッフにルールの説明をおこないました。
参加できなかったスタッフには後日、直接口頭で説明します。
大切なことは、まず一度全員の耳に入れておくということです。「聞いてなかった。」「説明を受けていないからやらなくてもいい。」と思われないようにです。
説明方法は、
問題➜原因➜対策
の順で説明します。
例えば、
「人間違い誤薬が発生しました。利用者の命に関わります。再発防止が必須です。原因は、服薬担当者がA様の薬をB様の薬と思い込んでいたことです。個人的な原因もありますが、施設に服薬手順マニュアルがなく独自のやり方を行っていたという意味で全体の問題でもあると考えています。対策は、マニュアルを作成し徹底することです。」とマニュアル中身を説明。
最後に参加の意見や質問を求めます。
良い意見が出た場合は、中身をその場でブラッシュアップします。
ルールができたら目に付く場所に貼付しましょう。
ルールが開始されると最初は上手いこといきません。
内容を理解していないスタッフや忘れてしまうスタッフがいるためです。
ここでやることは、口頭での是正や指摘をすることです。仲間と一緒に行います。
『あーだ、こーだ』と言ってくるスタッフがいると思いますが、人間違い誤薬を起こさないためと説明しルールに従ってもらいます。
正直、ここが最も労力を要する部分です。さまざまな意見が出ます。アドバイスであればよいのですが、やらない理由ばかり言うスタッフへの対応は大変です。ただ、全体の2割ぐらいかと思います。残りの8割はなんだかんだルールの必要性を理解し従ってくれます。
STEP4 ルールを浸透させる

スタッフが現場で意識して行動に移す段階では、ブラッシュアップや口頭指導を繰り返し行い、ルールの理解を深めます。
導入が終わったら、浸透です。
浸透とは、スタッフが現場で意識し始め、行動に表れている状態のことです。
上記の例だと、全員ができているわけではないけど服薬手順マニュアル通りに動こうとしている段階です。
ミスも生まれる段階なので、発見したら是正をしましょう。
ここで大切なことは、ルール通りに行っていく中でイマイチうまくいっていない場合、ブラッシュアップをすることです。
「この手順不要だな」「もっと具体的にしたほうがいいな」などです。
できるだけ完璧に近い状態に持っていきます。
改善点が見つかれば、仲間と一緒に変更し、再度全スタッフに発信します。
その場合も、「聞いてなかった。」「説明を受けていないからやらなくてもいい。」と思われないように共有しましょう。
STEP5 ルールを定着させる

日常業務で自然に守られる状態を目指すことで、ケアの質向上やチームワーク改善、リーダーへの信頼が積み上がります。
最後に定着です。
定着とは、日常業務で自然に守られている、違反が少ない状態です。
ここまでくれば、ルールは施設に定着したと考えて良いでしょう。
逆にここまでしなければいけません。
ルールが定着すれば、ケアの質が向上したり人間関係が良好になったりします。
ルール作りで失敗しないためのポイントと効果
ここまで、ルール作りの流れを解説してきました。
最後に、実践するうえで知っておくべきポイントを整理します。
ルールは“縛るもの”ではなく“守るもの”
ルールというと、
「自由がなくなる」「やりにくくなる」「現場が固くなる」
といったイメージを持たれがちです。
しかし本来の役割は逆です。
ルールは、利用者と職員を守るためのものです。
・事故やミスを防ぐ
・判断に迷わなくなる
・誰がやっても一定の質を担保できる
つまり、現場を“縛る”のではなく、現場を“安定させる土台”になります。
ルールを押し付けると失敗する
ルール作りでよくある失敗が、
一方的に決めて、そのまま押し付けること
です。
これをやると、
・現場の反発が強くなる
・形だけ守って中身が伴わない
・陰でルール違反が横行する
といった状態になります。
そのため、
・問題 → 原因 → 対策で説明する
・意見を一度受け止める
・納得感を意識する
といったプロセスが重要です。
メリット:現場とリーダーが圧倒的に楽になる
ルールが定着すると、現場は大きく変わります。
ケアの質が安定する
・誰が対応しても一定のレベルを維持できる
・ミスやインシデントが減る
指導がしやすくなる
・「自分の意見」ではなく「ルール」で伝えられる
・歳上スタッフにも冷静に指摘できる
チームワークが改善する
・共通の基準ができる
・無駄な衝突や対立が減る
新人が育ちやすくなる
・教える内容が統一される
・迷わず動ける
リーダーの負担が減る
・毎回判断しなくてよくなる
・精神的なストレスが軽減する
デメリット:導入初期は負担が大きい
一方で、デメリットもあります。
最初はとにかく大変
・ルール作りに時間がかかる
・周知・説明の手間がある
・現場への指導が増える
反発が必ず出る
・今までのやり方を変えたくない人がいる
・否定的な意見が出る
・人間関係が一時的に悪化する可能性がある
継続しないと意味がない
・指摘をやめるとすぐ崩れる
・中途半端な状態で止まると逆効果
ルールがあなたの指導を支える
歳上の部下に指導できない原因は、あなたのスキル不足ではなく“ルールがないこと”です。
ルールがない現場では、指摘はすべて「個人の意見」として扱われます。
だからこそ、反発されたり、聞いてもらえなかったり、人間関係が悪化してしまいます。
しかし、ルールがあれば
指導は「個人の意見」ではなく「施設の基準」になります。
その結果、感情に左右されず、誰に対しても一貫した指導ができるようになります。
もちろん、ルール作りは簡単ではありません。
時間もかかりますし、反発も出ます。最初はうまくいかないことも多いです。
ですが、それを乗り越えれば
・ケアの質が安定する
・チームがまとまる
・新人が育つ
・リーダーの負担が減る
といった大きな変化が必ず起きます。
短期的には大変、長期的には圧倒的に楽になる取り組みです。
まずは完璧を目指さなくて大丈夫です。
「1つの業務」からルールを作ってみてください。
ルールは、あなたの指導を支え、理想の介護を実現する土台です。
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