介護リーダーとして現場も管理も抱え込み、仕事が山積みなのに「これは自分の仕事だから」と誰にも振れず、体力的にも精神的にも限界を感じていませんか?
実は、専門性×複雑性を軸とした役割分担表を使うと、スタッフの役職に合った仕事が明確になり、介護リーダーが受け持っていた仕事を減らすことができます。
なぜなら、専門性と複雑性で仕事を整理すると、「本来リーダーがやるべき仕事」と「スタッフが担える仕事」の線引きが明確になるからです。
これまでリーダーに集中していた業務の多くは、専門的判断が不要でも、役割が曖昧なために集まっていました。
役割分担表で業務を可視化することで、スタッフは自分の立場に合った役割を理解し、リーダーは判断や責任が求められる仕事に集中できるようになります。
私は介護リーダーとして仕事をする中で、スタッフから 「〇〇様の物品の在庫がない」 「シフト変更時の業務調整どうします?」 といった相談を、すべて自分に持ってこられる状況を経験してきました。 一つひとつは小さなことでも、積み重なると常に呼ばれ、考え、判断し続けなければなりません。 その結果、本来集中すべき仕事に手が回らず、心身ともに余裕を失っていました。
この記事では、専門性×複雑性を軸にした役割分担表の作り方と、なぜそれが介護リーダーの仕事を減らすのかを解説します。
あわせて、現場で無理なく定着させるための考え方や、役割分担がうまくいかないときの見直しポイントもお伝えします。
結論から言うと、介護リーダーの仕事が減らない原因は「能力不足」ではなく、「役割が曖昧な仕組み」にあります。
人を頑張らせるのではなく、専門性×複雑性で仕事を整理し、役割として明確にすることが、現場を回し続ける方法です。
1.専門性×複雑性と役割分担表の考え方

役割分担表を作ろうとすると、
「結局、何を任せていいの?」
と手が止まることがよくあります。
なのでまずは、この記事で使う言葉の意味を、
介護現場の感覚に合わせて整理します。
専門性ってなに?
この記事でいう専門性は、
「考える力がどれくらい必要か」「判断の重さはどれくらいか」
という意味です。
たとえば、
- 利用者対応の方針を決める
- トラブルが起きたときに優先順位をつける
- スタッフ同士の意見をまとめる
こういった仕事は、経験がないと判断しづらく、責任も伴うため、専門性が高い仕事です。
一方で、
- 物品の在庫を確認する
- 決まった形で記録を書く
- マニュアル通りに環境を整える
これらは、やり方が決まっていて判断もそれほど必要ありません。
専門性が低めの仕事と言えます。
複雑性ってなに?
次は複雑性です。
これは簡単に言うと、「調整がどれくらい必要か」ということです。
たとえば、
- シフト変更に伴う業務の組み直し
- 多職種への情報共有
- 行事や急な対応の段取り
関わる人が多く、状況もコロコロ変わる仕事は、どうしても手間がかかります。
こうした業務は複雑性が高い仕事です。
反対に、
- 毎日同じ流れで行う業務
- 手順が決まっている作業
は、調整が少なく複雑性が低い仕事になります。
この2つで仕事を見直す
ここまでをまとめると、
介護現場の仕事は、
1.考える重さ(専門性)
2.調整の多さ(複雑性)
この2つで見ることができます。
この視点で仕事を整理すると、「これはリーダーが抱えなくてもいいな」「これは最終判断が必要だな」
が、自然と見えてきます。
役割分担表ってなに?
この記事でいう役割分担表は、仕事をただ並べた表ではありません。
「この仕事は誰が考えるのか」
「どこまで本人が判断していいのか」
をはっきりさせるための表です。
役割分担表があると、
- スタッフは「ここまでは自分の仕事」と分かり
- リーダーは「判断が必要なところ」に集中できる
ようになります。
2.なぜ「任せよう」としてもうまくいかなかったのか

ここまで読んで、
「それなら今までも仕事を任せようとはしてきた」
と思った方も多いと思います。
それでも現実は、
結局リーダーの仕事が減らなかった。
むしろ増えていった。
その理由は、任せ方そのものにあります。
「任せているつもり」になっていた
介護現場でよくあるのが、
「これお願いね」と仕事は振っている➜でも最終的な判断はリーダー➜困ったらすぐ確認がくる
という状態です。
これだと、作業は任せているけど、責任は任せていない状態になっています。
スタッフ側からすると、
- どこまで自分で判断していいか分からない
- 間違えたら怒られるかもしれない
- だったら最初から聞いた方が安全
こう考えるのは自然です。
スタッフが悪いわけではない
ここで大事なのは、これはスタッフの能力ややる気の問題ではないということです。
役割がはっきりしていない状態では、
- 判断を避ける
- 責任を持たない
- 確認を取る
こうした行動になりやすくなります。
つまり問題は、「聞いてくるスタッフ」ではなく、「聞かざるを得ない仕組み」にありました。
仕事がリーダーに集まる構造
役割が曖昧な現場では、
- 判断が必要そう
- 失敗したくない
- 責任を取りたくない
そんな仕事ほど、自然とリーダーに集まります。
その結果、
・小さな相談が途切れない
・常に呼ばれる
・考え続ける
という状態になります。
リーダーが忙しくなるのは、頑張りが足りないからではなく、
そうなる構造ができていたからです。
だから「役割」が必要になる
ここで初めて、
役割分担表の意味が出てきます。
役割分担表は、
- 仕事を押し付けるためのもの
- 責任転嫁するためのもの
ではありません。
「ここまではあなたの判断でOK」「ここからはリーダーが関わる」を事前に決めておくためのものです。
これがない限り、どれだけ「任せよう」としても、仕事は減りません。
3.役割分担表を作る前に知っておいてほしいこと

役割分担表は、うまく使えばリーダーの負担を大きく減らせます。
ただし、やり方を間違えると逆効果になることもあります。
ここでは、作る前に必ず押さえておきたい前提条件を整理します。
いきなり完璧を目指さない
役割分担表は、最初から100点を狙うものではありません。
- 「全部決めなきゃ」
- 「抜けがあったらダメ」
こう考えると、作ること自体がしんどくなります。
最初は、
- よく相談される仕事
- いつも自分が対応している仕事
このあたりからで十分です。
人数・経験によって任せ方は変わる
同じ仕事でも、新人・中堅・ベテランでは、任せられる範囲が違います。
役割分担表は
「誰でも同じ」にするものではなく、「今の立場に合わせる」ものです。
経験が浅いスタッフが多い場合は、最初はリーダー関与を多めにして問題ありません。
責任を押し付けるためのものではない
役割分担表を作ると、「決めたんだから、あとは知らない」
という使い方をしてしまうケースがあります。
それでは現場は回りません。
役割分担表は、「放置するため」「突き放すため」のものではなく、
判断の境界線を共有するためのものです。
役割分担表は「更新前提」
介護現場は、常に状況が変わります。
- 人の入れ替わり
- 利用者の状態変化
- 業務内容の変化
一度作って終わり、ではありません。
「今の現場に合っているか?」を定期的に見直す前提で使うことが大切です。
リーダーが全部楽になるわけではない
正直に言うと、役割分担表を作ったからといって、
リーダーの仕事がゼロになるわけではありません。
ただ、
1.不要な判断
2.本来任せられる仕事
が減るだけでも、現場のしんどさは大きく変わります。
4.専門性×複雑性で役割分担表を作る手順

ここからは、実際にどうやって
役割分担表を作っていくかを説明します。
難しいことはしません。
ポイントは「考え方の順番」です。
ステップ① まずは仕事を全部書き出す
最初にやることは、とてもシンプルです。
リーダーが今やっている仕事を、全部書き出す。
次に他のスタッフの仕事も聞きます。
たとえば、
- 物品の在庫確認
- シフト変更時の調整
- 申し送り内容の判断
- スタッフからの相談対応
どこまで掘り下げるかは施設によって違います。
業務量や人員体制によって、細かく分けたほうが整理しやすい場合もあれば、
ある程度まとめたほうが分かりやすい場合もあります。
すべてを機械的に洗い出す必要はありません。
リーダー自身が「気になっている業務」や「なぜか自分に集まってくる業務」から棚卸ししても十分です。
まずは、
「自分が本来やらなくてもよさそうなのに、やっている仕事」
を見つける感覚で書き出してみてください。
ステップ② スタッフ全員で「専門性×複雑性」に分ける
次に行うのは、
書き出した仕事を、専門性と複雑性でざっくり分類することです。
この作業は、リーダーひとりでやらないことが大切です。
なぜなら、リーダーだけで決めてしまうと、
「仕事を減らしたいだけでは?」
「面倒なことを現場に押し付けようとしているのでは?」
と、意図しない受け取り方をされてしまうことがあるからです。
そこで、スタッフを集めて、
「この仕事は専門性が高いか?低いか」
「判断が複雑か?単純か」
を一緒に考える場を作ります。
ここで大切なのは「基準」を共有すること。
このステップで一番重要なのは、「リーダーの感覚で決めているわけではない」とはっきり伝えることです。
あくまで判断基準は、
- 専門性が必要か
- 判断や調整が複雑か
この2つだけ。
「誰がやりたいか」「誰が楽か」ではなく、仕事の性質そのもので考えているという姿勢を示します。
そして、
今後も、この専門性と複雑性を軸に役割を考えていきます
と、意向を示しておくことがポイントです。
話し合いは「正解」を出す場ではない
この段階では、細かく正解を決める必要はありません。
「だいたいこっち」「こっち寄りかな」というざっくりした分類で十分です。
スタッフ自身が
「この仕事って、実はそんなに専門的じゃないかも」
「判断は意外と単純かも」
と気づくこと自体に意味があります。
ステップ③「リーダー案件」と「スタッフ案件」を分ける
次にやるのは、
仕事を2つに分けることです。

- 専門性・複雑性が高いもの → リーダー案件
- それ以外 → スタッフ案件
専門性・複雑性が低いものは新人スタッフ、専門性が高く複雑性が低いものは次期リーダー候補など、どこにどの役職のスタッフを当てはめるか決めておきましょう!
ステップ④ 役割分担表に落とし込む
ここで初めて、
「役割分担表」の形にします。
難しい表は必要ありません。
最低限、
- 仕事の内容
- 担当(誰がやるか)
この2つがあれば十分です。
役割表が完成したら、事務所やフロアに掲示します。
リーダーの役割以外のことで相談に来た際に、「それは〇〇さんの役割だから、まずは直接聞いてみてください」と伝えることが出来ます。
ステップ⑤ うまくいかなくて当たり前
最初から完璧に回ることは、ほぼありません。
- 相談が減らない
- 役割を決めたけど、スタッフが対応できていない
それでOKです。
対応できていないスタッフには「何があったのか」を直接確認し、必要であればOJTを行い徐々に自分の役割をこなしていってもらえればいいのです。
5.補足・注意点・メリット・デメリット

役割分担表は、仕事を減らすためのテクニックではありません。
スタッフが自立し、責任を持って動ける現場を作るための仕組みです。
補足|役割分担の目的は「管理」ではなく「自立」
役割分担という言葉から、「管理される」「縛られる」と感じるスタッフもいます。
しかし本来は逆です。
役割を明確にすることで、
- どこまで自分で判断していいのか
- どこから相談すべきなのか
が分かるようになります。
これは、
考える余地を奪う管理ではなく、考える範囲を与えることです。
注意点①|責任は「押し付ける」ものではない
役割を決めるときに大切なのは、
- 丸投げしない
- 失敗したときに支える
という姿勢です。
役割分担は、「あとは任せた」ではなく、
「ここまではあなたの責任。ここからは一緒に考える」
という線引きです。
この前提がないと、役割分担は不信感を生んでしまいます。
注意点②|一度で完成させようとしない
役割分担表は、一度作って終わりではありません。
- うまくいかなかった
- 想定と違った
- 現場が混乱した
そう感じたら、
見直す前提でOKです。
役割分担は、現場に合わせて育てていくものです。
メリット|責任を取れるスタッフが増える
役割が明確になると、
スタッフは「聞く人」から「考える人」へ変わっていきます。
「なぜうまくいかなかったのか」「次はどうすればいいか」を、自分の役割として考えるようになるからです。
その結果、
- リーダーに仕事が集中しなくなる
- 判断が現場に分散される
- チームとしての力が上がる
といった変化が起きます。
デメリット|最初は違和感がある
正直に言うと、
- 話し合いに時間がかかる
- すぐに楽にはならない
- うまくいかない時期がある
というデメリットはあります。
しかし、役割が曖昧なまま走り続けるほうが、長期的にはリーダーも現場も消耗します。
6.まとめ

介護リーダーの仕事が減らない原因は、能力や努力不足ではありません。
判断と責任がリーダーに集中してしまう、役割が曖昧な仕組みにあります。
「任せているつもり」でも、どこまで判断していいのか、誰が責任を持つのかが決まっていなければ、
スタッフは確認せざるを得ず、仕事は自然とリーダーに集まります。
そこで有効なのが、
専門性×複雑性を軸にした役割分担表です。
仕事を「考える重さ」と「調整の多さ」で整理することで、
本来リーダーが担うべき仕事と、スタッフが担える仕事の線引きが明確になります。
役割分担表の目的は、
仕事を押し付けることでも、管理を強めることでもありません。
スタッフが自分の役割を理解し、責任を持って動けるようになることです。
責任を取れるスタッフが増えれば、
判断は現場に分散され、リーダーは本来の役割に集中でき、
結果として施設全体の質も向上していきます。
もし今、
「自分ばかりが考えている」
「誰にも仕事を振れない」
と感じているなら、
それはあなたの能力の問題ではありません。
まずは10分で構いません。
今、自分がやっている仕事を書き出し、
専門性と複雑性の視点で見直してみてください。
そこから、一人で抱え込む現場を変える第一歩が始まります。
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