現場リーダー必見!プリセプター制度で介護人材を育てる基本

チームづくり

「新しいスタッフが入社したのに、1年も経たずに辞めてしまう。」「退職率が高い。」
とリーダーをしていて嘆いたことはありませんか?

実は、プリセプター制度を正しく使えばスタッフの定着率を向上させることができます。
※プリセプターとは、新人や後輩の教育・指導を担当する先輩スタッフのことです。

多くの施設は、「プリセプターは存在するけど何をすればいいのかわからない。」「方向性が決まっていないので自己流で教えてしまっている。」なんてことがよくあります。よって、施設が求めるレベルに到達できなかった人が辞めていきます。

わたしはリーダーとして働いている時、2年間で新人スタッフ7名配属されました。内4名が退職しました。「新しいスタッフを育てる意識がなく、即戦力だけを求める環境」が辞めていく理由でした。
プリセプター制度を導入から3年目で、新人スタッフの定着率が100%になりました。
施設全体に人材育成の意識が根付いたのです。

この記事は、人材育成の目的とプリセプターの選定方法から取り組み方まで順を追って説明します。

この記事を読むとプリセプターは何をすべきなのか。新人スタッフが目指すゴールはどこなのかがわかります。

プリセプター制度とは

プリセプター制度とは、
新人スタッフ1人に対して専属の先輩(プリセプター)をつけ、一定期間(主に1年間)マンツーマンで育成する仕組みです。

単に「教える人を決める制度」ではなく、
計画的に新人を育てるための“育成システム”であることがポイントです。

それぞれの役割

  • プリセプター:日々のOJT・面談・成長支援を担当
  • 新人スタッフ:学びながら実践し、自立を目指す
  • リーダー・施設長:目標設計・進捗管理・評価を行う

👉 現場任せではなく、組織全体で育てる仕組みです。

プリセプター制度を失敗させないための考え方

プリセプター制度がうまくいかない原因は、
育成の目的がズレていることです。

多くの現場では、

・業務を一人で回せるようになる
・介助技術が身につく

これをゴールにしてしまいがちです。

しかし、それだけでは
👉 「作業ができる職員」で止まってしまいます。

本来の目的

プリセプター制度の目的は、

施設の理念や思いを現場で実践できる人材を育てることです。

具体的にどういう状態か?

例えば、「今までの生活を行っていただく」が施設の思いであれば

  • 利用者が自分で食事できるなら、安易に介助しない
  • トイレで排泄できる方は、時間がかかってもトイレで支援する

こうした判断や行動が、無意識にできる状態を目指します。

よくある勘違い

多くの現場では、

  • 業務を一人で回せるようになる
  • 介助技術が身につく

これをゴールにしてしまいがちです。

しかし、それだけでは
👉 「作業ができる職員」で止まってしまいます。

技術や知識はあくまで手段

例えば排泄介助。

おむつ交換は早く終わります。
トイレ誘導は時間がかかります。

でも、トイレで排泄することで
生活リズムが整い、食事も進みます。
👉 「どうやるか」ではなく「何のためにやるか」が大切

よくある現場のズレ

多くの現場では、次のような状態が起きています。

  • 教え方が人によって違う
  • 業務優先でケアの意味が伝わっていない
  • 「とりあえずできるようになればOK」になっている

この状態では、
👉 新人は「作業」を覚えるだけで終わってしまいます。

なぜ早期離職が起きるのか

新人が辞める理由はさまざまですが、現場でよくあるのはこの3つです。

  • 何を目指せばいいのかわからない
  • 自分の成長を実感できない
  • 教えられる内容に一貫性がない

つまり、
👉 育成の方向性が見えていないことが原因です。

プリセプター制度の具体的な進め方【完全ロードマップ】

プリセプター制度は、
流れを決めて運用することで初めて機能します。

プリセプター制度は、次の3つで構成されます。

① 準備(仕組みを作る) 
STEP1〜4
② 育成(OJTと面談)
STEP5〜8
③ 評価(振り返り)   
STEP9

この流れに沿って進めることが重要です。

【STEP1】プリセプターを選定する

▶ プリセプター選定ミーティング(目安:配属1ヶ月前)

  • 目的: 新人スタッフを導く育成担当=プリセプターを決定する
    ※断られる可能性もあるため、候補を複数名考えておきましょう。
  • 参加者: 施設長・リーダー(自分)・運営メンバー(副施設長等)

プリセプター選びはとても重要です。
ここを間違えれば、人材育成の目的は達成しないでしょう。
では、どのような人をプリセプターにすべきなのか?

それは、施設の理念や思いを言動で表現しているスタッフです。

※施設の理念や思いがない場合は、施設長に決めてもらいましょう。
「プリセプターを選びたいと思っています。施設長の大切にしている思いや目指している施設を体現できるスタッフを育成したいです。大切にしている思いを教えて下さい。」と聞いてみましょう。
決めきれない場合は、あなたの大切にしている思いであり目指している施設を軸に人材育成をしていきましょう!
そのためには、参加者の共感や説得が必要です。時間と手間がかかります。それぐらい施設長の思いが明確でない施設でリーダーが人材育成を根付かせる仕組みをつくることは困難です。

理念や思いがない施設は、正直なところ将来性が乏しいでしょう。わたし同様、リーダーとして仕組みをつくることは可能ですが、「勝手なことをするな。」と施設長が許さないことがあります。自分の力ではどうしようもできない場合、「モヤモヤしながら日々の業務をこなして終わり。」みたいなやりがいのない日が続きます。「楽しく介護の仕事をしたい!」と思っている方は異動や転職をおすすめします。

【STEP2】プリセプターに任命したことを伝える

プリセプターが決まったら、できるだけ早めに施設長から本人へ伝えてもらいます。
施設への思いは施設長が一番持っているので、熱意が伝わります。
※熱意があまりない施設長の場合は、代わりを立てましょう。わたしの場合、施設長より施設への思いが強かったので代わりに引き受けました。

大人数で伝えにいくと相手が断りづらくなるので、できれば1名。多くても2名を目安にしましょう。

ここでは、承諾してもらうことが一番の目的です。
聞いていなかったとならないように、プリセプターの任期(1年)と任命した理由、役割を伝えます。
また、今後のスケジュールも伝えます。
いきなり任命され、様々な不安があります。一方的に押し付けるのではなく、相手の考えを傾聴しましょう。

【STEP3】プリセプターに役割を伝え、育成目標を決める

▶ プリセプターミーティング(目安:配属2週間前)

  • 目的: プリセプターの役割と年間&3ヶ月後の具体的な育成ゴールを一緒に設定
  • 参加者:施設長・リーダー・運営メンバー(副施設長等)・プリセプター

プリセプターの承諾を得たら次のステップです。
ステップ②と同時進行でも構いません。

ここではプリセプターへ再度役割を伝え、目的が達成できるように何をしていくのか決めていきます。

役割:
施設の理念や思いを現場で実践できる人材を育てること

新人スタッフ育成2項目

役割はわかったけど、何から始めたらよいのかわからない。

そこでおすすめする方法は、2項目に絞って人材育成に取り組むことです。

1.通常業務
2.利用者との関わり

通常業務:シフトの動きを覚えることやトイレ介助などの介護技術、認知症ケアなど。
利用者との関わり:利用者の生活歴や状態などその人に合わせた関わり方。

なぜこの2つなのか?
通常業務は、介護職として働く上で基本となる仕事なので必須で覚える必要があります。
ただ業務をこなすだけが介護職の仕事ではありません。
介護職の役割は、利用者の尊厳の保持と自立支援です。
だからこそ、利用者との関わりが重要になります。

2項目の年間目標を決める

年間目標は、施設の理念や思いによって変わってきます。
しっかり話し合って決める必要があります。

わたしの場合は、

介護環境を「ふつうの生活」の場に近づけたい、「なじみの関係」をつくりたい。

この思いを実現するための一人として、活躍してもらうために下記の目標をプリセプターと立てました。

分野目標
1.通常業務①全シフトの独り立ち。
(独り立ち:一人で業務を行える。介護技術が無難にこなせる。)
2.利用者との関わり①3大介護(食事・入浴・排泄)、認知症、終末期ケアについて利用者主体の考えを実践できる。
②担当利用者の思いを1つ形にする。

なぜ年間(1年)の目標を設定するのか?
それは、1年未満の退職率が高いからです。
公益財団法人 介護労働安定センターの「令和4年度介護労働実態調査」から介護職(訪問介護員・介護職員)の離職者のうち「1年未満」が34.7%。つまり、離職した人の3分の1以上が入職から一年未満で辞めています。引用:レバウェル介護求人

2項目の3ヶ月後の目標を決める

年間目標を立てた後は、それが達成されるための配属3ヶ月後の目標を決めます。

わたしの場合、

分野目標例
1.通常業務①遅番まで終える。
※わたしの施設では早番→遅番→日勤→夜勤の流れでOJTを進めています。
2.利用者との関わり①だいきリーダーから三大介護(食事・入浴・排泄)、認知症、終末期ケアの研修を受ける。
②ケア時や空き時間に担当利用者と会話ができ生活歴や昔話、やりたいことを聞くことができる

ここまで決まったら、年間目標と3ヶ月後の目標を施設全体に発信しスタッフに周知します。
施設全体ミーティングを開催している施設であれば、その場でスタッフへ直接説明します。

【STEP4】受け入れ準備と環境づくりをする

準備するもの

  • 利用者一覧表
  • 業務マニュアル(シフトごと)
  • 個人で使用するもの(ロッカー、名札、制服、レターボックス、靴箱、ボールペン等)
  • ウェルカムボード(ロッカー貼付したりレターボックスに入れておく)
  • 振り返りシート※後述します

プリセプターを中心に、多くのスタッフを巻き込み準備します。

【STEP5】OJTの準備をする

OJTの回数やシフトの順番、やりかたを考えていきます。

OJTの回数は会社によって異なります。
例えば、10シフト分のOJTが可能な場合、早番2シフト、遅番2シフト、日勤2シフト、夜勤4シフトみたいな感じで組みます。
順番に関しては責任者シフトと呼ばれるシフトは後回しにし、比較的やさしいシフトから開始するなど工夫します。
決まったらシフト作成者にも必ず伝えてください。ここを忘れると、一気に計画が崩れてしまいます。
最後にやりかたです。
独り立ちするまでに、先輩スタッフは下記のような流れに沿ってOJTを行っていきます。

OJT担当者※1から順に行う内容
1.言って聞かせる言葉・文章・図解で業務を説明する
2.してみせる実技や対応の実演
3.やってもらう危険予測を含めて実際にやってもらう
4.ほめる成功体験を積ませる
5.任せてみる失敗や焦りを通じて成長を見守る

新人スタッフは何ができて何ができないのかOJT担当者はできる限り把握しておく必要があります。なぜなら、OJTの回数はきまっているためです。効率よく進めないと、教えることができなかった業務が出てきてしまいます。そうなると、独り立ちした後、新人スタッフが困ってしまいます。

そうならないために、業務マニュアルと振り返りシートを活用しましょう!

振り返りシートとは

OJT担当者は、業務マニュアルに沿って教えていきます。
「同じ早番の動きでもA先輩とB先輩の動きがまったく違っていてどっちが正しいのかわからない。」と混乱させない為です。
※業務マニュアルがない施設はシフト毎に作成しましょう。「15時○○様の排泄介助」など具体的に記載するようにします。
新人スタッフは、できたことできなかったことを振り返りシートに記載していきます。その場で解決できるものはしましょう。

※わたしが実際に使用したものです

振り返りシートの運用方法ですが、
新人スタッフは、OJT担当者に振り返りシート見せ、前回うまくできなかったところを優先的に教えてもらいます。自発的に「教えて下さい!」と先輩スタッフに聞ける仕組みでもあります。
OJT期間中は、これを繰り返します。

プリセプターがやることは、振り返りシートの内容を確認することやOJTをしたスタッフに感想を聞いて回ることです。
「現状どんな感じか」をプリセプターとして把握します。
プリセプターから見た新人スタッフOJTスタッフから見た新人スタッフ新人スタッフ自身の自己評価3つの視点から現状や課題を洗い出します。

リーダーは、プリセプターが新人スタッフのことを把握できているか一歩引いたところで見守ります。

【STEP6】4者面談をする

▶ 4者面談 (目安:配属初日)

目的:歓迎
内容:
ー自己紹介
ー新人スタッフの思いを聞く(介護の想いなど)
ー新人育成2項目の年間目標と3ヶ月後の目標を共有し、共通のビジョンを持つ
参加者:施設長・リーダー・プリセプター・新人スタッフ

配属初日に施設長、リーダー、プリセプター、新人スタッフの4者で面談を行い、顔合わせをします。
「プリセプターとは、育成担当」ということを認識してもらいましょう。
そして、施設の理念や思いを伝え、新人スタッフの年間目標と3ヶ月後の目標を共有します。

この日、プリセプターは初めて新人スタッフと対面することになります。
新人スタッフが複数名いる場合、相性が合う人をプリセプターにしたいのですが、その場だけで新人スタッフの性格などはわかりません。なので、感覚で決める勇気も必要です。
わたしは、同じ出身のもの同士、雰囲気が柔らかいもの同士をくっつけたりしていました。

【STEP7】OJT開始

シフトのOJTが始まります。
ここではステップ⑤でお伝えした、業務プログラムと振り返りシートを用いて行っていきます。

【STEP8】定期面談を行う

▶ 2者面談 (目安:最低月1回)

  • 目的: 目標達成までの進捗確認と見直し、立案
  • 参加者: プリセプター・新人スタッフ


必ず、月1回の定期面談は行いましょう。
ここでは、配属前に立てた3ヶ月後の目標が、このままで達成できそうか?できそうでない場合は、何をどうするのか?
達成していた場合、年間目標達成に向けて次はどのような目標をたてるのか?など、進捗の確認と見直し、立案を行います。
参加者はプリセプターと新人スタッフです。二人で目標達成までの道筋を考えます。最初の3ヶ月は毎回リーダーが入って一緒に考えてもいいです。ただ徐々に、プリセプターと新人スタッフだけで考えられるように仕向けましょう。そうすることで、双方が成長できます。
月1回の定期面談とは別に、新人スタッフが悩んでいる場合は面談を組み話を聞きましょう。自分から言えない方もいるので、気になった際は声をかけましょう。

リーダーは、面談に参加しなくなった後もプリセプターとのコミュニケーションは取りましょう。定期面談は組めているかや年間目標が達成できそうか。困っていることがないか。最後まで見届ける責任があります。

【STEP9】年間の振り返りをする

▶ 4者面談 (目安:年度最終月)

目的:振り返り
参加者:施設長・リーダー・プリセプター・新人スタッフ

年間の振り返りを行います。
振り返る内容は、

施設の理念や思いを現場で実践できる人材なれたか。

です。

評価の指標は、年間目標が達成できたかになります。
すべての目標が達成していれば、人材育成成功です。
新人スタッフの頑張りはもちろんですが、プリセプターが見事に役割を果たしたということです。
施設長は評価をしてあげる必要があります。評価とは、ねぎらいの言葉も大切ですが給与という形で還元します。
ボーナスを増やしたり、等級(階級)を上げたりするなどです。
リーダーからも施設長にプリセプターの成果をアピールしましょう。
その裏で、リーダーがプリセプター育成に成功したということを忘れてはいけません。
何かしらの形で施設長に自分をアピールしましょう。ここ重要です!(笑)

目標が達成しないこともあります。
達成できなかった目標は次年度の課題です。
新人スタッフは課題を克服するために自ら何をするのか考え行動します。ステップ⑧の面談で培った“自分で考える力”がここで生かされます。
プリセプターはリーダーや施設長とともに、なぜ達成まで導けなかったのかを分析し振り返ります。
次年度はプリセプターではなくなりますが(※降格ではなく任期の問題で)、年間目標が達成されるまで影からサポートしてあげることが大切です。もちろん2年目もプリセプターとして活動しても問題ありません。

何一つ達成できなかった場合、
年間目標が高かった可能性があります。またはプリセプターのモチベーションや新人スタッフの意欲が低かった可能性もあります。
プリセプター制度を施設に定着させるために目標の立て方や、プリセプターの選定方法が正しかったのかなどを振り返りましょう。必ず原因があります。

失敗しないためのポイントと対策

制度より「運用」がすべて

プリセプター制度は、仕組みを作ることが目的ではありません。
大切なのは、現場で回り続けることです。

どれだけ良い制度を作っても、

・面談が形だけになっている
・振り返りが行われていない
・目標が放置されている

この状態では意味がありません。

👉 「やり続けられる形」にすることが最も重要です。

失敗する現場の共通点

プリセプター制度がうまくいかない現場には、共通点があります。

① プリセプターに任せきり
→ 組織で育てる仕組みが機能しない

② 目標が曖昧
→ 何を目指しているかわからない

③ 評価・振り返りをしていない
→ 成長も改善も止まる

👉 制度が止まる原因は「放置」です。

導入する価値

プリセプター制度が機能すると、現場に大きな変化が出ます。

・育成の質が安定する
→ 教え方のバラつきがなくなる

・新人の定着率が上がる
→ 成長実感と安心感が生まれる

・スタッフの判断力が上がる
→ 「なぜ?」を考える習慣がつく

👉 結果として、事故防止やケアの質向上にもつながります。

事前に知っておくべきこと

一方で、デメリットもあります。

・時間と手間がかかる
→ 面談・振り返りの時間が必要

・プリセプターの負担が増える
→ フォロー体制がないと疲弊する

・最初はうまくいかない
→ 試行錯誤が必要

👉 最初から完璧を求めず、「改善前提」で進めることが大切です。

プリセプター制度を成功させるためのまとめと次の一歩

プリセプター制度は、理念を軸に「目標→OJT→面談→振り返り」を回し続けることで、考えて行動できる介護職を育て、定着率とケアの質を高める仕組みです。

ただし、最初からうまくいくことはほとんどありません。
大切なのは、うまくいかなかった原因を振り返り、改善しながら運用し続けることです。
制度は作って終わりではなく、現場で育てていくものです。

まずは、今回紹介した中の
「理念の確認」と「育成目標の言語化」から実践してみてください。

また、「現場が変わらない」「育成がうまくいかない」と感じている方は、
自分の介護観に合う職場を探すことも一つの選択です。

実際に私が転職で環境を変えた体験は、こちらで詳しく解説しています👇

「根が深い。根底から施設を変えていくには?」
リーダーがやるべき利用者、ご家族、スタッフのための施設づくりとは?▼

コメント

タイトルとURLをコピーしました