担当している利用者が看取り期に入った。
「何をすればいいのか」「何を言えばいいのか」「どこまでやっていいのか」と戸惑ったことはありませんか?
実は、ターミナルケアでヘルパーに求められる役割は、通常のケアと大きく変わりません。
「今までの生活の延長線上にある」という視点が加わるだけです。
なぜなら、目的は延命ではなく「その人らしく最期まで生きること」を支えることだからです。
その視点があれば、どう動くかが自然に見えてきます。
私は介護業界10年以上、複数の施設でリーダーを経験してきました。
スタッフが「何をすればいいかわからない」と戸惑う場面を何度も見てきた一人です。
この記事では、ターミナルケアの定義・ヘルパーの役割・看取り介護の流れ・看取り期の身体変化をお伝えします。
この記事を読むと、ターミナルケアで何をすべきかが明確になり、利用者と家族に寄り添う具体的な動き方がわかります。
結論、ヘルパーがすべきことは「今まで通りのケアを、その人らしく続けること」です。
ターミナルケアとは何か

ターミナルケアとは、病気や老衰などにより回復が見込めない状態になった方に対して、無理な延命治療は行わず、残された時間をできるだけ穏やかに過ごせるよう支援するケアです。
「終末期医療」「終末期ケア」とも呼ばれます。
緩和ケア・看取りケアとの違い
似た言葉に「緩和ケア」と「看取りケア」があります。整理しておきましょう。
- 緩和ケア:がんなどの疾患による痛みや苦痛を和らげながら「生きていくこと」を支えるケアです。積極的な治療と並行して行われることもあります
- ターミナルケア:回復が見込めない段階で、穏やかな最期を迎えることに重点を置いたケアです。積極的な治療は行いません
- 看取りケア:ターミナルケアと意味は近いですが、医療行為をメインに行う場合をターミナルケア、介護をメインに行う場合を看取りケアと区別することが多いです
利用者主体の介護観を深めたい方はこちら▼
『新しい介護 ―介護職の新しい教科書―』を読んで変わった考え方
ヘルパーの役割と動き方

ターミナルケアでヘルパーに求められる役割は「今まで通りのケアを、その人らしく続けること」です。
看取り期に入ったからといって、特別なことをする必要はありません。
ただし、利用者の状態変化を見逃さない観察眼と、チームへの迅速な報告・連絡・相談が求められます。
- 身体的ケア
- 精神的ケア
- 家族へのサポート
①身体的ケア
ターミナルケアにおける身体的ケアの基本は、食事・排泄・入浴などの三大介護を「今まで通り」続けることです。
- 食事:飲み込みが難しくなってきた場合は、きざみ食・ペースト食・とろみをつけるなど食形態を工夫します。無理に食べさせようとせず、好きなものを好きなだけ食べてもらうことが大切です
- 清潔保持:入浴が難しくなってきた場合は清拭で対応します。口腔ケアも誤嚥性肺炎予防のために重要です。着替えやシーツ交換をこまめに行い、清潔で快適な状態を保ちます
- 排泄:歩行が困難になった場合はポータブルトイレやおむつを使用します。皮膚トラブルや尿路感染症を防ぐため、清潔保持と皮膚の観察を丁寧に行います
- 体位変換:寝たきりになると褥瘡(床ずれ)のリスクが高まります。定期的な体位変換とエアマットの活用で予防します
- 状態観察と記録:食事量・水分量・排泄量・バイタルなど、いつもと違う変化があれば速やかに記録し報告します
②精神的ケア
死期が近づくと、利用者は死への恐怖・孤独・後悔など複雑な感情を抱えます。ヘルパーにできる最も大切なことは「聴くこと」です。
- こまめな声かけ・傾聴をする
- 体をさすったり手を握るなどスキンシップを大切にする
- 趣味の時間や好きな音楽を取り入れる
- 「耳は最後まで聞こえている」と言われるため、無言のケアにならないよう注意する
③家族へのサポート
看取りはご家族にとっても大きなストレスです。ヘルパーとしてできることがあります。
- 介護負担を軽減できるよう身体的なサポートを行う
- 家族が話したいときに話を聞く
- 「無理をしすぎていませんか」と声をかける
- 家族が利用者とゆっくり過ごせる時間を確保できるよう配慮する
看取り介護の流れ6ステップ

看取り介護は「突然始まるもの」ではありません。
利用者の状態変化に合わせて、段階を踏んで準備を進めていきます。ヘルパーとして流れを把握しておくことで、チームの一員として適切に動けるようになります。
① 物品の準備
看取り期に入る前に、必要な物品を準備します。
ただし過剰な準備は必要ありません。
「これがないと看取れない」というものはほとんどなく、今あるもので対応できることがほとんどです。
主な準備物品の例:
- エアマット(褥瘡予防)
- 清拭用タオル・使い捨て手袋
- 口腔ケア用品
- おむつ・尿パッド
- 吸引器(必要な場合)
物品の手配は施設や事業所によって対応が異なります。
誰が手配するかは事前に確認しておきましょう。
ヘルパーとしては「何が必要か」を観察し、気づいたことをチームに伝えることが重要です。
② 看取り会議の開催
看取りに入る前に、チーム全員で方針を確認する看取り会議を行います。
会議で確認する主な内容:
- 本人・家族の意向(どこで・どのように最期を迎えたいか)
- 医療処置の範囲(延命治療をするかしないか)
- 緊急時の連絡体制(誰に・どの順番で連絡するか)
- 各職種の役割分担
ヘルパーも会議に参加し、日頃の観察で気づいていることを共有することが重要です。
「この方はこういう食べ物が好き」「夜中に目が覚めることが多い」といった生活の細かな情報は、ヘルパーにしかわからないことです。
③ 多職種との連携
ターミナルケアは一人では担えません。施設医・看護師・ケアマネジャー・介護職がチームとして連携します。
ヘルパーの役割は「生活の場を支える観察者」です。
バイタルの変化・食事量の低下・表情の変化など、日常の細かな変化をいち早く察知し、看護職・医療職に伝えることがヘルパーの重要な役割になります。
緊急時の連絡先・手順はあらかじめ確認しておきましょう。
「誰に・何を・どの順番で連絡するか」を事前に把握しておくことで、いざというときに冷静に動けます。
④ 三大介護を今まで通り続ける
看取り期に入っても、食事・排泄・入浴の三大介護は基本的に今まで通り続けます。
「看取りだから仕方ない」という意識でケアの質を下げることは、その方の尊厳を傷つけることになります。
状態に合わせて方法は変えますが、「できなくなったことを補う」ではなく「できることを最大限に活かす」という視点は変わりません。
具体的な介助方法は「ヘルパーの役割」のセクションを参照してください。
三大介護(食事・排泄・入浴)それぞれの基本的な考え方と手順はこちら▼
【食事介助の基本】リーダーがスタッフに伝える目的と手順
【入浴介助の目的と手順】個浴を可能にする考え方と実践
【排泄ケアと尊厳】リーダーがスタッフに伝える目的と関わり方
⑤ 情報共有と記録
看取り期は日々状態が変化します。
ヘルパーが気づいた変化を記録に残し、チームで共有することが非常に重要です。
記録すべき主な項目:
- 食事・水分の摂取量
- 排泄の状態(量・色・回数)
- バイタル(体温・血圧・脈拍・呼吸)
- 表情・言動・睡眠の様子
- 皮膚の状態(発赤・褥瘡の有無)
「いつもと違う」と感じたことは、どんな小さなことでも記録し報告することが大切です。
その情報が看護職・医療職の判断を支えます。
⑥ エンゼルケア(死後のケア)
利用者が亡くなった後に行うケアをエンゼルケアといいます。
ただしエンゼルケアを行えるのは、事業所の方針や看護師との連携のもとで対応が決まっている場合に限ります。
エンゼルケアの目的は、その方の尊厳を最後まで守ることです。
丁寧に体を清め、できる限り安らかな表情に整えます。
利用者への感謝と敬意を持ってケアにあたりましょう。
また、利用者が亡くなった後の家族への言葉かけも大切なケアの一つです。
本人の意志を尊重する

看取り介護を始める前に最も重要なのが、本人と家族の意志確認です。
インフォームドコンセント
医師から病状・治療方針・余命についての説明を受け、本人・家族が納得した上で看取りの方針を決定します。延命治療をするかしないか、最期をどこで迎えたいかなど、意思確認を文書で行います。
ヘルパーとして大切なのは、この意思決定を尊重することです。「もっと食べさせた方がいい」「点滴をしてほしい」という気持ちが生まれることもありますが、本人と家族が選んだ方針を支えることがヘルパーの役割です。
意思は変わることがある
一度決めた方針も、本人・家族の気持ちが変わることがあります。
「やはり病院に移りたい」「点滴をしてほしい」といった変化があれば、ヘルパーはその気持ちを受け止め、すぐにケアマネジャーや看護師に伝えましょう。
看取り会議はあくまで「方針を確認する場」であり、そこで決まった内容がすべてではありません。
利用者の状態が変化するにつれ、ケアの方針も柔軟に見直していく必要があります。
ヘルパーは日々の関わりの中で「この方が今何を望んでいるか」を感じ取り、チームに伝え続けることが重要です。
注意点・メリット・デメリット

メリット
- ヘルパーが看取り期の流れを知ることで、チームの一員として適切に動ける
- 「今まで通りのケア」を続けることで、利用者の尊厳を最期まで守れる
- 身体変化の知識があることで、いつもと違う変化に早く気づける
デメリット
- 看取りに初めて関わるヘルパーは精神的な負担が大きくなることがある
- チームの連携が不十分だと、緊急時に適切な対応ができないリスクがある
- 看取りのたびに感情的な消耗が積み重なり、バーンアウトにつながることがある
注意点
- 医療行為はヘルパーの範囲外です。痰の吸引・点滴・投薬などは看護師・医師が行います。「自分にできることとできないこと」を明確にしておきましょう
- 旅立ちが近いサイン(死前喘鳴・チアノーゼ)に気づいたら、速やかに看護師に報告してください。自己判断で対応しようとしないことが重要です
- 看取り後は自分の気持ちを誰かに話しましょう。利用者との別れを経験するたびに悲しみや無力感を感じるのは自然なことです。「もっとできることがあったのではないか」と自分を責める必要はありません。チームで振り返りを行い、感情を共有することが次の看取りに向けた大切な準備になります。
まとめ:ヘルパーの役割

ターミナルケアでヘルパーに求められるのは特別なスキルではありません。
「今まで通りのケアを、その人らしく続けること」と「いつもと違う変化を記録・報告すること」の2つです。
看取りは怖いものでも特別なものでもなく、その方の人生の最終章を支える時間です。
チームで連携し、本人と家族の意思を尊重しながら、最期まで寄り添うケアを続けてください。
まずは次の看取り会議で、自分が観察してきた利用者の日常の情報を積極的に共有するところから始めてください。
ヘルパーだからこそ知っている情報が、チーム全体のケアの質を上げます。
看取りを経験したヘルパーは、介護の本質に向き合う機会を得た一人です。
「その人らしく最期まで生きること」を支えた経験は、ヘルパーとしての成長につながります。
ターミナルケアを怖いものとして避けるのではなく、「自分にできることを積み重ねる場」として前向きに向き合ってください。
介護リーダーとして次のステップを知りたい方はこちら▼
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