介護現場で、間違いに気づいても「注意できない」ケアが一番危険な理由

チームづくり

現場でルール違反を見かけても、「忙しそうだから」「今は波風を立てたくない」と、そのまま流してしまったことはありませんか?
注意しないほうが、現場がうまく回る気がする。そんなふうに感じる場面もあると思います。

スタッフを注意せずに野放しにすることは、優しさではありません
なぜなら、「何も言われない=問題ない」と受け取られ、ルールが少しずつ守られなくなるからです。

私は介護現場でリーダーとして、指摘されない状態が続いた結果、命に関わるケアまで自己判断で行われ、危険が見過ごされていく現場を何度も見てきました。

この記事では、スタッフを野放しにすることで現場にどんなリスクが生まれるのか、そして規律を保つために必要な「指摘の流れ」について解説します。
この記事を読むと、リーダーとして現場を守るために何をすべきかが明確になります。

結論、命に関わるケアを個人の判断にしないためには、
「守るべきルール」と「守られていないときに止める流れ」を
現場として持つ必要があります。

1.本記事でいう「ルール違反」とは

本記事で扱うルール違反とは、
施設で定められたルールのうち、利用者の命や安全に直結するものが守られていない状態を指します。

ここで重要なのは、

・すべての小さなミスを過度に問題視すること
・職員を管理・統制すること

ではありません。

あくまで本記事が伝えたいのは、

👉 「命に関わるケアが、自己判断で行われてしまう状態」
👉 「誰も止めないことで、危険な行為が常態化してしまう状態」

を防ぐための対応です。

例えば、

  • 服薬介助の手順が省略されている
  • 入浴前のバイタルサインを看護師に伝えないまま介助が行われている
  • 本人に合っていないトロミ量で提供されている

こうした行為は、
「慣れているから」「忙しいから」という理由で見過ごされがちですが、
いずれも利用者の命に直接影響する可能性がある行為です。

だからこそ、
本記事では「些細なミス」ではなく、
命と安全に関わるルール違反への向き合い方に焦点を当てています。

2.なぜルール違反は見過ごされやすいのか

介護現場では、ルール違反が起きていても、
悪意があって行われているケースは多くありません。

「分かってはいるけれど、今は仕方ない」
「これくらいなら大丈夫だろう」
という判断の積み重ねです。

忙しさが判断を鈍らせる

人手不足や業務過多の中では、
本来立ち止まって確認すべき場面でも、
「今は時間がない」という理由で省略されてしまうことがあります。

その場では何も起こらなくても、
“何も起きなかった経験”が積み重なることで、危険への感覚が鈍っていきます。

人間関係への配慮が、指摘をためらわせる

  • 相手との関係が悪くなりそう
  • 年上・経験年数が上の職員には言いづらい
  • チームの空気を壊したくない

こうした気持ちから、
「今回は言わなくていいか」と流してしまうことも少なくありません。

「誰かが言うだろう」という思い込み

複数人が同じ場面を見ていると、
「誰かが注意するはず」という心理が働きやすくなります。

結果として、
誰も指摘しないままケアが続き、
ルール違反が「普通のやり方」として定着してしまいます。

注意されない=問題ない、という誤解

最も危険なのは、
注意されない状態が続くことそのものです。

何も言われなければ、
「これで問題ないんだ」
「このやり方でいいんだ」
と受け取られてしまいます。

その結果、本来は慎重に行うべき命に関わるケアまで、
自己判断で行われるようになってしまうのです。

3.指摘は「罰」ではなく「安全管理」

介護現場における指摘の本来の目的

まず最初に、はっきりさせておきたいことがあります。

介護現場における指摘の目的は、
誰が悪いかを明らかにすることではありません。

  • 正しさを押し付けるためでもない
  • 個人を管理・統制するためでもない

本来の目的は、

👉 利用者の命と安全を守ること
👉 スタッフ自身を事故や責任から守ること

この2つです。

この前提が抜けたまま指摘が行われると、
注意は「叱責」に、ルールは「縛り」に変わってしまいます。

指摘は「罰」ではなく「予防」

指摘とは、
何かが起きてから責める行為ではなく、
何も起きないようにするための予防行動です。

現場では、
事故には至っていなくても、本来は危険を伴う行為であっても、
「今のところ何も起きていないから大丈夫」
と判断されてしまうことがあります。

しかし、
事故が起きてからでは、取り返しがつきません。

だからこそ、
事故に至る前の段階で立ち止まり、危険を未然に防ぐために、
指摘という行為が必要になります。

注意されない現場は、やさしい現場ではない

注意されない現場は、一見すると穏やかで働きやすそうに見えます。
しかし実際には、

・判断が間違っていても止められない
・自己判断が正しいか確認されない
・危険なケアが「いつものやり方」として定着する

という状態です。

指摘されないことは「信頼されている」ことではなく、
安全確認が行われていない状態でもあります。

その結果、
本来は複数人で確認すべき命に関わるケアまで、
個人の感覚や経験だけで進められてしまいます。

指摘されること=信頼されている

指摘を行うということは、
相手を責めるための行為ではありません。

本当に関心がなければ、
人はルール違反に気づいても何も言わず、
そのまま見過ごします。

あえて指摘を行うのは、
その職員を、現場を一緒に守る仲間として見ているからです。

だからこそリーダーは、指摘を「対立を生む行為」ではなく、
チームとして安全を確認するための行為として位置づける必要があります。

4.命に関わるルール違反を防ぐための具体的な対応

① 命に関わるケアを「ルールとして明確にする」

ルール違反に対応する前に、
リーダーが最初にやるべきことは、
命に関わるケアが、施設としてルール化されているかを確認することです。

ここで言うルールとは、

・マニュアルや手順書が存在している
・誰に聞いても同じ答えが返ってくる
・「暗黙の了解」ではない

この状態を指します。

もし、「何となくそうしている」「人によってやり方が違う」

というケアがあるなら、
それはルールが存在していないのと同じです。

命に関わるケアを、個人の経験や感覚に任せない。
誰がやっても同じ判断・同じ行動になる状態を作る。

これが、このあとの「指摘」や「是正」が機能するための前提になります。

命に関わる事故を防ぐために、ルール化すべきケアの例

※以下はあくまで一例であり、
施設や利用者の状況によって追加・調整が必要です。

1️⃣ 食事に関するケア

食事は誤嚥や窒息と直結するため、
特に統一したルールが必要です。

  1. とろみ量の目安を明確にする
  2. 義歯の入れ忘れを防ぐための確認ルール
  3. 提供時の食形態ミスを防ぐ手順
  4. 服薬方法・服薬介助の手順

これらは、
「慣れているから」「分かっているから」
で済ませてよい内容ではありません。

2️⃣ 入浴に関するケア

入浴は体調変化が起こりやすい場面です。

  • 入浴前のバイタルサインを必ず測定する
  • 測定結果を看護師へ報告し、指示を確認する

この工程を省略したまま入浴介助を行うことは、
重大事故につながる可能性があります。

そのため、
入浴前のバイタル測定・看護師への報告はルールとして明確化する必要があります。

② ルール違反を見つけた時の“初動対応”を決めておく

ルール違反については、
発見した職員が、その場で本人に直接伝える
という初動対応を、現場の共通ルールとして決めておきます。

「ルール違反者には、役職や年次に関係なく気付いた人が声をかけましょう。指摘後、改善されない場合は、リーダーに共有すること」などです。

この初動対応を、
「言える人だけが言う対応」にしないことが、大切です。

③ 指摘しても改善しない場合、リーダーが直接対応する

指摘や声かけを行っても、同じルール違反が繰り返される場合は、
そのまま流したり、個人間で解決しようとしないことが重要です。

この段階で、
リーダーが対応を引き取ります。

リーダーは、

・実際に何が起きているのか
・どのルールが守られていないのか
・なぜ是正が必要なのか(命・事故のリスク)

を整理したうえで、
リーダー自身の言葉で、本人に改めて伝えます。

ここは、
「注意の伝言役」になる場面ではありません。

現場の判断基準として、ルールを守る必要性をリーダーの責任で伝える段階です。

指摘の際は「なぜ守る必要があるのか」を必ず伝える

ルール違反を指摘する際は、
ルールを守る理由・根拠を必ずセットで伝えます。

例:
とろみ量が適切でない場合、誤嚥のリスクが高まり、
誤嚥性肺炎につながる可能性があります。
最悪の場合、命に関わる危険性があるためです。

理由が共有されていないルールは、形だけになり、守られなくなります。

④ リーダー対応でも改善しない場合、管理者へ共有する

リーダーが直接対応し、ルールとその必要性を伝えてもなお、
同じルール違反が繰り返される場合は、この時点で初めて管理者へ共有します。

ここで大切なのは、
「言うことを聞かない職員を告げ口する」ことではありません。

管理者へ共有する目的は、

・現場レベルでは是正が難しい状態になっている
・個人の注意や指導の範囲を超えている
・事故につながるリスクを組織として把握する必要がある

この事実を、組織として認識するためです。

管理者に共有する内容は「感情」ではなく「事実」

共有する際は、

・誰が
・いつ
・どのルールを
・どのように守れていないのか
・これまでどんな対応を行ってきたのか

を整理して伝えます。

「態度が悪い」「言っても聞かない」ではなく、
ルールと行動に焦点を当てることが重要です。

管理者対応=処分ではない

管理者が関わるからといって、
即処分や厳罰につながるわけではありません。

・ルールの理解にズレがないか
・守れない背景や事情がないか
・ルール自体に無理がないか

これらを含めて確認し、
事故を防ぐための対応を組織として決める段階です。

リーダーが「全部背負わない」ための切り替え

ここまで対応しても改善しない場合、
それ以上をリーダー個人の責任で抱え込む必要はありません。

リーダーが現場で止め、
それでも止まらないものを管理者につなぐ。

この線引きを明確にしておくことが、現場を守り続けるために必要です。

ルール違反対応でリーダーが持つべき視点

ルール自体に無理がないかを必ず見直す

ルール違反が起きたとき、
つい「守れなかった本人」に目が向きがちです。

しかし、リーダーがまず確認すべきなのは、
そのルール自体が現場で本当に守れる内容かどうかです。

具体的には、次の点を見直します。

  • 現実的に守れる内容になっているか
  • 表現が曖昧で、人によって解釈が分かれていないか
  • 今の現場状況や人員体制に合っているか

ルールが守られなかった背景には、
「忙しすぎて不可能だった」「やり方が分からなかった」など、
仕組み側の問題が隠れていることも少なくありません。

守れなかった=個人の問題
と決めつけない。

この視点を持つことが、
現場を守るリーダーの重要な役割です。

ルールは一度決めて終わりではなく、
現場に合わせて継続的にブラッシュアップしていくものです。

ルールや仕組みは、導入・浸透・定着の順で進んでいきます!では具体的にどうするの??▼

5.ルールと指摘を運用することで起きる変化(メリット・デメリット)

仕組みを入れた現場は、こう変わる

事故の芽を、起きる前に止められる

判断が個人に委ねられていないため、
「たまたま何も起きなかった」で済まされる危険なケアが、
早い段階で止められます。

結果として、
事故が起きてから原因を探す現場ではなく、
事故が起きないように確認し合う現場に変わります。

自己判断が減り、責任が個人に集中しなくなる

ルールと指摘の流れがあることで、
「自分の判断が正しいかどうか」を一人で抱え込む必要がなくなります。

判断の軸が個人ではなく現場にあるため、
職員は「決めた通りに動く」ことに集中できます。

これは、ミスを減らすだけでなく、
職員自身を責任追及から守ることにもつながります。

スタッフ間の基準がそろい、現場のズレが減る

誰かによって注意される・されないが変わる現場では、
不満や不信感が生まれやすくなります。

ルールと指摘の基準が明確になることで、
「誰が相手でも同じ対応がされる」状態になります。

その結果、
「言った・言わない」「注意された・されていない」
といった感情的なトラブルが減り、
現場の人間関係も安定します。

最終的に守られるのは、利用者とスタッフの両方

ルールと指摘の仕組みは、
利用者の命と安全を守るためのものですが、
同時に、現場で働くスタッフを守る仕組みでもあります。

事故が起きたときに
「なぜ誰も止めなかったのか」と責任を問われる現場ではなく、
「止める仕組みがあった」と言える現場をつくることができます。

必ず出てくる反発と、その正体

一時的に「厳しくなった」と感じられることがある

ルールが明確になり、指摘が行われるようになると、
これまで曖昧だった部分が一気に表に出ます。

そのため、「細かくなった」「厳しくなった」
と感じる職員が出てくることは避けられません。

厳しくなったのではなく、
今まで暗黙の了解で回していた部分が、
言語化・共有された状態です。

基準が見えるようになることで、
職員は「次に何をすればいいか」「どこまで守ればいいか」を
迷わず判断できるようになります。

運用が定着すると、

・判断に迷う場面が減る
・確認すべきポイントが明確になる
・責任を一人で背負わなくてよくなる

といった変化が起こります。

その結果、「厳しい現場」ではなく、
「判断が楽な現場」だと感じられるようになります。

何も起きない今こそ、止める役割が必要

スタッフを野放しにしない仕組みは、
利用者の命を守るためだけでなく、現場で働くスタッフ自身を守るために必要なものです。

指摘とは、誰かを責める行為ではありません。
事故が起きてから後悔しないための、予防行動です。
命に関わるケアを個人判断に任せず、ルールとして明確にし、守られていないときに止める。
その役割を担うのが、リーダーです。

まずは、
「自施設で、命に関わるケアが“個人判断のままになっていないもの”は何か」
これを1つだけ、具体的に挙げてみてください。

もし、
「ルールはあるが機能していない」
「注意したいが、どう動けばいいか分からない」
と感じているなら、
本記事で紹介した考え方と対応の流れを、そのまま1事例に当てはめてみてください。

現場の安全は、
ルールが破られた瞬間に「誰が・どう止めるか」が
決まっているかで決まります。

あなたの一つの確認と指摘が、事故を未然に防ぐ力になります。

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