「利用者主体の介護って何?」──理念と現場のギャップに悩んでいませんか?

「その人らしさを大切にする介護」──現場ではよく耳にしますよね。
多くの介護施設や職員が掲げる理念ですが、具体的にどんなケアをすれば良いのか、迷ったことはありませんか?
「利用者主体の介護って実際にはどういう意味?」
「本人の希望をすべて叶えるのは現実的に難しい…」
そんな悩みを持つ方も多いはずです。
今回は、介護歴9年の私が現場で実感した「本当に利用者にとって良い介護とは何か?」を、介護の3大基本である「食事・排泄・入浴」を中心に具体例とともにお伝えします。
利用者主体の介護とは?“普通の生活”を支えることが本質
「希望を叶える介護」ではなく「できるを支える介護」
「利用者主体」と聞くと、「利用者のやりたいことをすべて叶える介護」と勘違いされることがあります。もちろん、本人の希望は大切ですが、それだけではありません。
真の利用者主体の介護とは、「その人がその人らしく生きるために、できることは自分でやってもらい、できない部分を支援する」ことです。
たとえば、歩ける方に車椅子を用意してしまうと、本人の身体機能が低下してしまうリスクがあります。利用者主体とは「できる前提」で支援し、自立の可能性を最大限尊重することなのです。
制度が語る介護の目的は「尊厳の保持」
介護保険制度の第一条には、「尊厳の保持」が介護の基本理念として明記されています。これは「個人の人格や生命を尊重し、その価値を認めるケアを提供する」ことを意味します。
つまり、「尊厳を守る介護」とは、「その人が普通の生活を続けられるよう支援すること」と言い換えられます。
「普通の生活」とは、介護が必要になる前に、誰の助けも借りずにできていた日常の動作のことです。
なぜ“3大介護”が重要なのか?──食事・排泄・入浴がQOLを決める理由
身体機能の維持と尊厳保持に直結しているのが、介護の3大基本「食事・排泄・入浴」です。
食事介助──「自分で食べる」を支えるために
自分のペースで食事ができることは、健康だけでなく心の満足感にも繋がります。職員が無理に手伝い過ぎると、利用者の自立心を奪ってしまうことも。
たとえば、スプーンを持つ手に軽く添えるだけでも、自分で食べる感覚を守れます。

排泄介助──オムツではなく「トイレで排泄できる」支援を
排泄は最もプライベートな動作です。可能な限りトイレで排泄できる環境と支援が必要です。
ポータブルトイレの活用や、移乗の介助でトイレ利用を促し、オムツ依存を減らすことが尊厳の保持につながります。

入浴介助──できる限り“家庭と同じように”
機械浴は職員の負担を減らすための設備ですが、利用者の気持ちや尊厳を考えると、できるだけ自宅と同じ個浴や一般浴での入浴を支援したいところです。
入浴は清潔保持だけでなく、「気持ちよさ」や「リフレッシュ」を得る大切な時間。

ありがちなNGケア|スタッフ主体になっていませんか?

「利用者主体」と真逆の、スタッフ都合の介護は知らず知らずのうちに尊厳を奪っています。
- 歩けるのに車椅子に乗せてしまう
- 自分で食べられるのに、すべて食事介助してしまう
- 理由なく機械浴に入れる
このようなケアが続くと、利用者は「自分でできない」と思い込んでしまい、身体機能はさらに低下してしまいます。
「できる前提」で支援するというマインドセット
介護の本質は「できない理由を探す」ことではなく、「どうすればできるのか」を探し続けることです。
先入観や決めつけをやめて、利用者が“できること”を増やせる支援を心がけましょう。
できる方法を見つけるために環境や支援のやり方を工夫することも大切です。
価値観が違う現場で悩むあなたへ──環境を変える選択肢もある

介護観や価値観は職員一人ひとり違います。利用者主体の介護をしたいのに、周囲の理解が得られず悩むこともあるでしょう。
そんなときは、自分の考えに共感し支え合える環境を探すことも大切です。
転職は逃げではなく、「守りたい介護」を続けるための前向きな選択肢の一つ。

まとめ|利用者主体の介護とは「その人の人生を支えること」
利用者の尊厳を守り、「普通の生活」を支援することが、良い介護の本質です。
食事・排泄・入浴という生活の土台を支える介護こそが、QOLの向上につながります。
介護職として選ばれるために、まずは今日から「今のケアは誰のためか?」を考え直してみましょう。
「このままでいいのかな?」と思ったときに…
介護の現場で日々向き合っていると、「今の支援は本当にその人のためになっているのかな?」と感じることがあります。
私自身、そんな迷いの中で出会ったのが、「新しい介護」という本です。
「介護する側」から一歩引いて、「ともに生きる」という視点をもらえたことで、
目の前のケアの意味を改めて考えるきっかけになりました。

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