介護の現場で特に重要とされる「3大介護」のひとつが排泄介助です。
実は、排泄のケアは利用者のQOL(生活の質)を大きく左右し、認知症の進行にも影響を及ぼす可能性があることをご存じでしょうか?
この記事では、排泄介助の基本から、現場で実践できる具体的なアプローチ方法、さらには認知症との関係性まで詳しく解説していきます。
介護職員が目指すべき「本来の排泄介助」とは何か、一緒に考えていきましょう。
排泄介助とは?|人にとって排泄が重要な理由
私たち人間は、「食べて、排泄する」という生命活動のサイクルを繰り返しています。
排泄には、重力を使って直腸や膀胱内を空にし、再び空腹を感じて食事を摂るという大切な役割があります。排泄がうまくできないと、食欲が落ち、活動意欲の低下にもつながります。
つまり、排泄は生きる力に直結する、欠かせない行為なのです。
介護職員が目指すべき「理想の排泄介助」
介護現場では、「トイレで排泄すること」が利用者の尊厳を守る上で大切なゴールです。
しかし実際には、「オムツの方が手間がかからない」「安全を考慮してベッド上で済ませる」など、スタッフの都合でトイレ誘導を避けているケースも少なくありません。
もちろん、すべての方がトイレに行けるわけではありませんが、介護職員がまず考えるべきは「どうすれば、この方をトイレへお連れできるか?」という視点です。
排泄介助の具体的なアプローチ方法【自立度別】
■ 自力でトイレに行ける方への支援
- 手すりや家具を利用した伝い歩きができる環境をつくる
- 歩けないが立てる場合は、トイレ内などに手すりを設置し車椅子への乗り移りができる環境をつくる
- ポータブルトイレの設置
- はいずってでもトイレに行ける場合は、床に近い布団での生活環境の調整
■ 介助が必要な方への支援
- 手引き歩行での誘導
- 車椅子でのトイレ誘導(介助が必要な場合は2人介助)
■ トイレ誘導が難しいケース
以下のような方は、無理に誘導する必要はありません。
- 看取り期・終末期の方
- 意識障害や骨折による強い痛みのある方
- 二人介助でも困難な方
無理な移動は危険を伴うため、慎重な判断が必要です。
認知症と排泄ケアの深い関係
認知症の方であっても、不快な感覚(ムレ・ぬれ)は残っています。
トイレでの排泄ができずにパッド内で排泄してしまうと、自ら外そうとする、ナースコールで呼ぶ、といった行動が見られます。
しかし、職員がすぐに対応できなかった場合、ひとりで行こうとされ、転倒による骨折の可能性がでてきます。結果、ひどいところだと身体拘束が行われます。
そのような状況が続くと、利用者は「排泄していない」と気持ち悪さを忘れるために思い込むようになり、認知機能が低下していく原因にもなり得ます。
認知症の進行を防ぐためにも、「トイレでの排泄」は極めて重要なケアです。
排泄ケアの工夫でQOLが向上!【スキントラブル・自尊心への配慮】
オムツやリハビリパンツは蒸れやすく、スキントラブルや褥瘡のリスクが高まります。
理想は「綿パンツ+パッド」。これにより、皮膚トラブルを大幅に減らすことができ、介護職員の手間(アズノール塗布・陰部洗浄など)も軽減されます。
また、排泄をトイレで行えるようになると、
- 睡眠の質向上
- 自尊心の保持
- 快適な日常生活の維持
といった効果が期待できます。
まとめ|最期まで“当たり前の排泄”を支えるケアを
人は本来、便座に座って排泄してきました。
最期までその当たり前の生活習慣を保つことが、本人の尊厳を守ることにつながります。
利用者の状態を見極め、安全に最大限のケアができるよう、常に「トイレでの排泄」という目標を忘れずに取り組んでいきましょう。
次回予告|入浴介助のポイントと注意点を解説!
次回は「入浴介助」について詳しく解説します。
清潔保持・心身のリラックス・コミュニケーションの場として、入浴が持つ役割とは?お楽しみに!
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