忙しい介護現場で、高齢者の排泄介助にじっくり向き合えず、モヤモヤした気持ちを抱えていませんか?本記事では、介護職員が知っておくべき排泄介助の基本と重要性、具体的な支援方法、そして尊厳を守るために必要な視点を詳しく解説します。
高齢者の排泄介助とは?尊厳を守るために知っておきたい基本
私たち人間は「食べて、排泄する」という生命活動のサイクルを繰り返しています。排泄はただの生理現象ではなく、重力を利用して直腸や膀胱を空にし、その後また空腹を感じて食事を摂る大切な役割を持っています。
排泄がうまくできないと、食欲の低下や活動意欲の減退に繋がり、結果として高齢者の生きる力を弱めてしまいます。だからこそ、排泄は高齢者の尊厳を守るうえで欠かせない行為なのです。
介護職員が目指すべき理想の排泄介助|尊厳を守る支援とは
介護現場で大切にされるべきゴールは「トイレで排泄すること」です。これは高齢者の尊厳を守るうえで非常に重要なポイントです。
しかし現実には、「オムツの方が介護の手間が少ない」「安全面を考慮してベッド上で排泄を済ませる」といった理由から、トイレ誘導が避けられることも少なくありません。
すべての方がトイレに行けるわけではありませんが、介護職員としてまず持つべき視点は「どうすればこの方をトイレへ安全に連れて行けるか?」です。この考え方こそが、高齢者の尊厳を守る排泄介助の第一歩となります。
高齢者の自立度別 排泄介助の具体的なアプローチ方法
自力でトイレに行ける方への支援
- 手すりや家具を使った伝い歩きができる環境を整える
- 立てるけど歩けない方には、トイレ内に手すりを設置し車椅子への乗り移りができる環境をつくる
- ポータブルトイレを活用する
- はいずりでも行ける場合は、床に近い布団など生活環境を調整
介助が必要な方への支援
- 手引き歩行でトイレへ誘導
- 車椅子を使ったトイレ誘導(介助が必要な場合は2人介助で安全確保)
トイレ誘導が難しいケース
- 看取り末期の方
- 骨折など痛みが強い方
- 二人介助でも困難な方
これらの場合は無理な移動が危険を伴うため、状況に応じて慎重に判断する必要があります。
認知症予防にもつながる高齢者の排泄介助の重要性
認知症の方でも、不快な感覚(ムレやぬれ)は残っています。陰部を痒いてしまう光景をみたことがあるのではないでしょうか。
トイレで排泄できずパッド内で済ませる場合、自らパッドを外そうとしたり、ナースコールで頻繁に呼ぶ行動が見られます。
しかし職員が迅速に対応できなければ、利用者がひとりでトイレに行こうとして転倒し骨折するリスクが高まります。結果、場合によっては身体拘束(腕を縛る等)につながることもあります。
こうした状態が続くと、「排泄していない」と不快感を忘れようとし、認知機能のさらなる低下を招く恐れがあるのです。
だからこそ、認知症の進行を防ぐためにも「トイレで排泄すること」は極めて重要なケアといえます。
尊厳を守る排泄ケアの工夫|QOL向上とスキントラブル対策
オムツやリハビリパンツは蒸れやすく、スキントラブルや褥瘡(じょくそう)のリスクを高めます。
理想は「綿パンツ+パッド」の組み合わせ。これにより皮膚トラブルを減らせるほか、介護職員の負担である陰部洗浄や薬の塗布も軽減されます。
また、トイレで排泄できるようになると、以下の効果も期待できます。
・睡眠の質が向上する
・自尊心が保たれる
・快適な日常生活が維持できる
まとめ|高齢者の尊厳を守る排泄介助を最期まで支えるには
排泄は単なる生理現象ではなく、高齢者の生きる力に直結した重要な行為です。
介護現場では「トイレで排泄すること」を尊厳を守るゴールとして捉え、可能な限り利用者が自立して排泄できる支援を目指すことが求められます。
スタッフの都合でオムツやベッド上排泄に頼りすぎると、高齢者の心身に負担をかけ、認知症の進行や生活の質の低下を招きます。
利用者の意思や生活リズムに寄り添い、安全にトイレ誘導を継続することこそが、尊厳を守る排泄介助の本質です。
最期まで「トイレで排泄する」という当たり前の生活習慣を支え続けることが、介護職員に求められる大切な役割であると言えるでしょう。
「このままでいいのかな?」と思ったときに…
介護の現場で日々向き合っていると、「今の支援は本当にその人のためになっているのかな?」と感じることがあります。
私自身、そんな迷いの中で出会ったのが、「新しい介護」という本です。
「介護する側」から一歩引いて、「ともに生きる」という視点をもらえたことで、
目の前のケアの意味を改めて考えるきっかけになりました。
ちょっと立ち止まって振り返りたいときに、読んでみる価値ありです。
興味があるかたは新しい介護を参照ください。
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